セオリツヒメには様々な伝説があります。
しかし、その存在は神話には登場しておりません。
セオリツヒメとは、一体どんな神様なのでしょうか。
今回は謎の多いセオリツヒメについて解説していきます。
詳しく見てみましょう。
セオリツヒメとは?
セオリツヒメは祓戸の大神として名前があがりますが、その存在は神話には登場しません。
そんな謎の多いセオリツヒメ、詳しく見てみましょう。
セオリツヒメの正体
セオリツヒメの正体を調べてみると、その姿は数多くの神様と同一視されています。
正体も一つに決定づけるものはなく、推測の域を越えません。
インドから来た女神として有名な、弁財天もセオリツヒメの正体ではないかと言われています。
また一方では、龍神様であるとされる説も。
そしてアマテラスオオミカミの正妃であったという説や、また別の視点からアマテラスオオミカミの荒御魂がセオリツヒメだという説もあるのです。
これらは後ほど詳しく見ていきたいと思います。
セオリツヒメが登場する祝詞
セオリツヒメが登場する祝詞は、日本最古の祝詞である大祓詞です。
この祝詞は、イザナギが黄泉の国より帰ってきた際の禊(みそぎ)を起源としてされています。
心身の穢れや災いを祓い清める神事として、平安朝の頃には執り行われていたようです。
この大祓詞内に、セオリツヒメが登場しています。
「大祓詞によって祓われた罪穢れは、セオリツヒメが海へ流してくださる」といったような内容です。
このことからも、セオリツヒメが崇高な水の神様として崇められていたことがわかります。
アマテラスオオミカミとの関係
セオリツヒメとアマテラスオオミカミの関係は深く、大きく分けて二つの考え方に分かれるようです。
一つはセオリツヒメが、アマテラスオオミカミの正妃であったこと。
これはアマテラスオオミカミがホツマツタエという文献内では、男神(アマテル)だと書かれていることから考えられます。
アマテルには正室も含め、妻が13人いました。その妻の一人であり、正妻であったのがセオリツヒメだというのです。
二つ目は、アマテラスオオミカミの荒御魂だとされること。
日本の神様には二つの顔があったとされ、それぞれ和御魂(ニキミタマ)と荒御魂(アラミタマ)と呼ばれています。
和御魂は穏やかな面を持ち、表に見せている顔。
それに反して荒御魂は、荒々しくもエネルギーに満ち溢れた性質を持っているとされています。
アマテラスオオミカミの場合、その荒御魂がセオリツヒメだというのです。
またアマテラスオオミカミが祀られている伊勢神宮では、荒御魂は別で後祭宮に祀られています。
その伊勢神宮の神官が1200年代に書いた書物には、アマテラスオオカミの荒御魂の別名がセオリツヒメだと明記されているのです。
アマテラスオオミカミとセオリツヒメには、深いつながりがあるようですね。
セオリツヒメと六甲山
六甲山はかつて、その山全体を廣田神社が社領としていました。
そして廣田神社の主祭神は、撞賢木厳之御魂天疎向津媛命(ツキサカキイツノミタマアマサカルムカツヒメノミコト)とされています。
この向津媛命(ムカツヒメノミコト)こそが、セオリツヒメであるというのです。
まずムカツヒメと呼ばれることになったのは、セオリツヒメがアマテル(アマテラスオオミカミ)の正妻だったことに由縁があります。
日本の最高神といわれるアマテルと夫婦として対となり、向かい合う姫であるという意味でムカツヒメ「向か津姫」と呼ばれました。
また六甲山がかつて向か津峰(ムカツミネ)と呼ばれていたのも、セオリツヒメが由来だといわれています。
廣田神社の由緒記には、セオリツヒメの正体が明記されていました。
主祭神がセオリツヒメであり、それがアマテラスオオミカミの荒御魂であること。
ここでも、アマテラスオオミカミとの深い関係が見えてきます。
セオリツヒメの別名
セオリツヒメの存在は謎に包まれた部分が多いものの、いくつかの別名を持っています。
そのほとんどが、ホツマツタエにてアマテルの妻であったことから由来するものが多いようです。
まず「天下る日に向かつ姫(アマサカルヒニムカツヒメ)」という別名。
これは天=アマテルがセオリツヒメを妻とするため高御座を下り、それに向かい合う姫=セオリツヒメという由来があるようです。
またアマテルが禊を行った際に、その川の瀬が滝のように激しく流れていた様子に由来して
「サクナタリセオリツヒメ」とも。
斎名として「ホノコ」というお名前も持っています。
六甲山との関係でも少し触れましたが、向津媛命(ムカツヒメノミコト)という別名もありましたね。
セオリツヒメの伝説
謎に包まれているセオリツヒメですが、その謎の理由には様々な伝説との関わりがあるようです。
いくつか紹介していきます。
ニギハヤヒノミコトの妻?
セオリツヒメがニギハヤヒノミコトの妻とされるのには、ニギハヤヒノミコトの本名にヒントがありそうです。
ニギハヤヒノミコトの本名は、
天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊(アマテルクニテルヒコアメノホアカリクシタマニギハヤヒノミコト)
とされています。
名前の最初に天照(アマテル/アマテラス)と表記されていることから、ニギハヤヒノミコトも太陽神であると考えられました。
そして女性神アマテラスオオミカミの、男性神としての生まれ変わりとされるのです。
セオリツヒメがアマテルの妻だったことから、ニギハヤヒノミコトの妻として繋がったのは
自然だったのかもしれません。
セオリツヒメは弁財天様?
まずセオリツヒメが弁財天の生まれ変わりと言われる理由の一つに、
弁財天が水の神様だったということがあります。
罪・穢れを洗い流し、豊穣をもたらすといった点が共通していたことでこの説が有力視されたのではないでしょうか。
次にセオリツヒメが祀られていた場所であった六甲山も、この説を強めます。
先にお話しした通り六甲山は昔廣田神社の社領であり、セオリツヒメはムカツヒメと呼ばれ祀られていました。
六甲山上にある六甲比命大善神社では弁財天(吉祥天)を祀っており、
六甲姫・ヒメさんと呼ばれて親しまれています。
六甲山がかつて向か津峰と呼ばれていた頃は、廣田神社の社領であったため主祭神はムカツヒメです。
向か津峰から六甲と山の名を変えた今、六甲山に在する神社に弁財天を祀る神社ができました。
そのことから、ムカツヒメ(セオリツヒメ)=弁財天ということになったのかもしれません。
セオリツヒメは龍神様?
龍神様ではないかとされる説では、セオリツヒメが水の神様であることが関係しています。
セオリツヒメはすべての罪・穢れを海へ流し祓う、水の神様として有名です。
龍神様も水を司る神様であるという点が、この両神を結びつけたのかもしれません。
水の神様という繋がりだけでなく、アマテラスオオミカミの荒御魂という説も関わってきます。
荒御魂はその名の通り、荒々しく全てを一掃する程のエネルギーを持っていると言われてきました。
そんな荒御魂の一面をもつ水の神様と合わさると、より龍神説が濃厚になります。
セオリツヒメは封印されていた?
セオリツヒメを調べていくと、「封印されていた」という話が出てきます。
調べたところ、神様が封じ込められたような事実があるわけではありませんでした。
意図的にセオリツヒメの存在を記載しないようにしたことを、「封印」と表現されていたようです。
「封印」されたのではないかと言われるのは、持統天皇という女性天皇の存在が大きく関わってきます。
セオリツヒメが登場する文献は、ほとんどがホツマツタエからのものです。
記紀(日本書紀・古事記)ではセオリツヒメは一切登場しません。そこに持統天皇の存在が疑われているのです。
持統天皇は女性天皇の正統性を示そうと、日本神話において最高位の神アマテラスオオミカミを女性神に変えたのではという推測が多くされています。
アマテラスオオミカミが女性神となっては、正妃であったセオリツヒメの存在は都合が悪かったのかもしれません。
その理由から、意図的にセオリツヒメの存在は消されたという説があります。
またこの持統天皇はセオリツヒメを祀る神社に対し、「祭神を変えなさい」と勅命を下したと言われているのです。
そのことからも、持統天皇に「封印」されたという説が残っていても不思議ではないのかもしれません。
セオリツヒメのご利益
色んな姿をもち、謎の多いセオリツヒメ。
ありがたいご利益を、いくつかご紹介いたします。
開運隆盛
セオリツヒメの災厄を流してくれるご利益が、開運隆盛に繋がると考えられます。
セオリツヒメにお参りをすると、厄落としと開運が同時に叶うでしょう。
子授・安産
セオリツヒメは、特に女性に幸せをもたらしてくださる神様と言われています。
子授けを望む場合、うれしい結果をもたらしてくれるそうです。
また既に妊娠中の方も、出産への不安や恐怖を和らげ安産へ導いてくれると信じられています。
勝運合格
開運と同じように災厄や穢れを洗い流し、受験や難関試験に挑む方々にご利益があるようです。
試験前に参拝することで、セオリツヒメが力を与えてくれるかもしれません。
厄除け
セオリツヒメは水の神様として有名なことから、浄化や穢れを払う力が強いとされています。
また水の穏やかなイメージから、癒しや安らかな気持ちを与えてくれる存在でもあるようです。
厄払いなどをお考えの方は、ぜひセオリツヒメが祀られている神社にお参りしてみましょう。
縁結び
セオリツヒメが縁結びの神様として言われる由縁は、セオリツヒメ=織姫説があるからとされています。
七夕の織姫と彦星となれば、その強い絆は周知のとおりです。
年に一度しか会えずともお互いを想い合えるほどの伴侶を得ていることから、
その縁結びのご利益も期待できるのではないでしょうか。
セオリツヒメが祀られている神社
謎に包まれたセオリツヒメ。
祀られている神社をいくつかご紹介します。
訪れることで、セオリツヒメのパワーを得られるかもしれません。
伊勢神宮
住所 | 〒516-0023 三重県伊勢市宇治館町1 |
電話番号 | 0596-24-111 |
公式サイト | https://www.isejingu.or.jp/ |
主祭神 | アマテラスオオミカミ |
ご利益 | 強い開運、厄除、漁業・農業振興など |
セオリツヒメはアマテラスオオミカミの荒御魂として、正宮に次ぐ尊い宮とされている荒祭宮に祀られています。
行われる祭り(祈年祭・神嘗祭・新嘗祭)の儀式も正宮につづき勅使が参考され、正宮とほぼ同じものがお供えされているようです。
また伊勢神宮において古くからの重要な大祭は、皇大神宮と後祭宮のみであることから特別な宮だとわかります。
御霊神社
住所 | 〒541-0047 大阪市中央区淡路町4-4-3 |
電話番号 | 06-6231-5041 |
公式サイト | https://www.goryojinja.jp/index.html |
主祭神 | 天照大神荒魂(セオリツヒメ)、津布良彦神、津布良媛神、応神天皇、源正霊神 |
ご利益 | 厄除け、縁結び、諸事円満、成就、開運招福、商売繁盛、夫婦円満、子孫繁栄など |
御霊神社は昔から御霊さん(ごりょうさん)やごりょうはんとよばれ、親しまれてきた神社です。
その昔はかつては船場の商人や懐徳堂の塾生たちがお参りによく訪れていたそう。
江戸時代後期には、子どもだけで演じる歌舞伎芝居(子供芝居・中ウ芝居)の興行場所としても有名でした。
また大正15年(1926)までは境内で現在の国立文楽劇場の前身である、人形浄瑠璃の御霊文楽座の興業が行われにぎわっていたとされています。
小野神社
住所 | 〒206-0002 東京都多摩市一の宮1-18-8 |
電話番号 | 042-338-1151 |
公式サイト | https://onojinja.or.jp/ |
主祭神 | 天ノ下春命(アメノシタハルノミコト)、瀬織津姫命(セオリツヒメノミコト) |
ご利益 | 厄除け、厄払い、病気平癒など |
歴史的に見てもとても貴重で、格式高い神社である小野神社。
本来偶像を持たない神道では珍しく、東京都指定文化財にもなっている随身像があることでも有名です。
また現代では、パワースポットとして紹介されることも多いとのこと。
ぜひ一度足を運んでみてください。
廣田神社
住所 | 〒662-0867 兵庫県西宮市大社町7番7号 |
電話番号 | 0798-74-3489 |
公式サイト | http://www.hirotahonsya.or.jp/ |
主祭神 | 天照大御神之荒御魂(アマテラスオオミカミノアラミタマ=セオリツヒメ) |
ご利益 | 勝運合格、開運隆盛、子授安産、文学歌謡、厄才消除、家内安全、立身出生、 罪障祓滅、先導開拓など |
廣田神社では主祭神をアマテラスオオミカミノアラミタマや、ヒロタダイミョウジンと呼ぶことも。
これはどちらもセオリツヒメを指しています。
そして廣田神社で有名なのは、阪神タイガースの必勝祈願。
毎年球団の監督や選手の方々、そして多くのファンの方も訪れ阪神タイガースの必勝祈願をされているそうです。
これは80年以上続いているそうで、2023年には38年ぶりに日本一に輝いた際にはお礼参りもされたとのこと。
セオリツヒメの、勝運合格のご利益があったようです。
日比谷神社
住所 | 〒105-0021 東京都港区東新橋2-1-1 |
電話番号 | 03-3433-2034 |
公式サイト | https://www.hibiyajinja.net/ |
主祭神 | トヨウケノオオカミ、 セオリツヒメノオオカミ、ハヤアキツヒメノオオカミ、 イブキドヌシノオオカミ、ハヤサスラヒメノオオカミ |
ご利益 | 方位除け、家内安全、身体堅固、商売繁盛、社内安全、 交通安全、旅行安全、 厄除開運、 入試合格、 受験合格、 必勝祈願など |
日比谷神社は変わった別名があり、その名を「鯖稲荷」といいます。
名前の由来は「鯖」ではなく「旅泊(さば)稲荷」が由来だとか。
苦しむ旅人たちに社務所を開放していたことから、旅泊(さば)稲荷明神と呼ばれたそうです。
また昔は虫歯の虫を封じるためにご祈祷を受けると、ご利益があると信じられていました。
ご祈祷を受ける人は鯖を食べずに願うことで、治癒していたとか。
そして治癒したお礼参りにて、鯖を奉納していたようです。
まとめ
セオリツヒメについて紹介しました。
いかがだったでしょうか?
日本書紀にも古事記にもその名を見ることができず、詳しい情報が残されていない神様でした。
ですがセオリツヒメを崇拝している人々は確かに存在し、そのご利益を賜っていたようです。
自分の足でセオリツヒメの歴史を追ってみるのも、面白いかもしれません。