コノハナサクヤヒメはどんな神様?
コノハナサクヤヒメは、古事記や日本書記に登場する神様です。
桜のように儚く美しいことから、桜の語源だと言われています。
アマテラスオオミカミの孫であるニニギノミコトに一目惚れされ、三人の御子を生んだコノハナサクヤヒメ。
夫や子供に恵まれ幸せなはずのコノハナサクヤヒメですが、幸せの裏側では姉であるイワナガヒメの悲恋が関わってくるのです。
ふたりの出会いから順に、紹介していきます。
ニニギノミコトとの出会い
ふたりの出会いは、笠沙岬といわれています。
祖母であるアマテラスオオミカミに遣われ、現在の宮崎県高千穂町へと降り立つニニギノミコト。
周辺を散策していると、そこを通りがかった美女に思わず声をかけます。
その美女がコノハナサクヤヒメなのです。
あまりの美しさに一目ぼれしてしまったニニギノミコトは、その場で求婚します。
「父親に聞いてみないと・・・」と一度持ち帰るコノハナサクヤヒメでしたが、父親であるオオヤマツミノカミもそれを喜びました。
そして、結婚の話はとんとん拍子に進みます。
しかしニニギノミコトのもとへ嫁いできたのは、コノハナサクヤヒメと姉のイワナガヒメの2人。
神様の時代の一夫多妻は、少なくなかったようです。
ですが一目ぼれした美女コノハナサクヤヒメに比べると、イワナガヒメはとても受け入れがたい外見。
ニニギノミコトは姉のイワナガヒメだけを返し、コノハナサクヤヒメのみと結婚しました。
そんなニニギノミコトに対して、娘たちの父親オオヤマツミノカミはこう言います。
「二人の娘を差し上げたことには意味がありました。
姉のイワナガヒメには、岩のように頑丈で永遠を生きるほどの丈夫な子を。
妹のコノハナサクヤヒメには、花のように気高くも儚げな美しさをもつ子を。
ですが、姉のイワナガヒメだけを返されるとは。
お二人の子は、花のように美しく咲き誇る間のみの命となるでしょう。」
そうしてコノハナサクヤヒメの産んだ子どもの寿命は、人間と変わらない寿命となりました。
このことから、代々の天皇には寿命が生まれたといいます。
コノハナサクヤヒメの出産
コノハナサクヤヒメはニニギノミコトを結婚し、一夜を迎えました。
それから間もなく妊娠を確信し、その旨をニニギノミコトに報告します。
報告を受けたニニギノミコトは驚きます。
「一晩で身籠るはずがない!それは私の子ではなく、他のやつの子じゃないのか!」
疑うニニギノミコト。
疑いをかけられたコノハナサクヤヒメは
「他のものの子ならば産んでも無事ではないでしょう。神の御子ならば安産でしょう!」
と出入り口のない産屋を作って火を放ち、その燃え盛る産屋で出産しました。
そこで3人の御子を出産します。
それぞれホデリノミコト、ホスセリノミコト、ホヲリノミコトと名づけられました。
コノハナサクヤヒメの別名
古事記と日本書紀で、少し違うようです。
古事記 | 日本書記 |
神阿多都比売(カムアタツヒメ) | 神吾田鹿葦津姫(カムアタカシツヒメ) |
木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ) | 木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ) |
どうやら歴史的には「コノハナサクヤヒメ」という名前は、後から広まったようですね。
「カムアタツヒメ」・「カムアタカシツヒメ」の方が本名に近いもののようです。
また、出産後に酒解子神(サカドケミコノカミ)と呼ばれるようになります。
富士山とコノハナサクヤヒメの関係
コノハナサクヤヒメが富士山に祀られた時期はいつなのか定かではありません。
その昔、富士山は噴火や溶岩の流出を繰り返していました。
人々はそれを恐れ、富士山が噴火しないようひたすら山の平安を祈念することに。
そこで、コノハナサクヤヒメを祀られたといわれています。
なぜコノハナサクヤヒメだったのか・・・?
火の燃え盛る中、無事3人の子を産んだコノハナサクヤヒメ。
そんな故事に基づいて、家庭円満・安産・子安・水徳の神とされていました。
火難消除・航海・漁業・農業・機織等の守護神としても、全国的に崇拝する人々は増えていったようです。
それほどの崇敬を集めたコノハナサクヤヒメが、富士山の神様になったのは不思議ではありませんね。
父は山の神オオヤマツミノカミ
オオヤマツミノカミは、イザナギノミコトとイザナミノミコトの間に生まれました。
山の神様の総元締として知られている神様です。
オオヤマツミノカミは山の神にとどまらず、広い分野の神様として知られています。
山は昔から様々な恵みをもたらすことから、恵みの神として金運や商売に繋げられたようです。
またオオヤマツミノカミは別名「ワタシオオカミ」とも呼ばれ、航海・交通の神としても知られています。
富士山を頂く浅間神社
浅間神社の始まりは、その昔富士山が大噴火したことに始まります。
大噴火したために人々は土地を離れ、周辺は荒れ果てた状態が長く続きました。
これを不憫に思われた第11代垂仁天皇が、浅間大神を現在の場所に祀ったことが浅間神社の起源です。
そこにコノハナサクヤヒメを祀った後、富士山に平穏がおとずれたといいます。
こうして、人々がまた安心して日々を送れるようになったと伝えられているようです。
また浅間大社の御神木は、コノハナサクヤヒメを由来とした桜の木。
境内には500本もの桜の木が奉納されており、シーズンには桜の名所として大変賑わいます。
コノハナサクヤヒメのご利益
これまでにご紹介したように、コノハナサクヤヒメは様々な神様として崇敬を集めています。
それぞれのご利益をご紹介していきましょう。
恋愛成就・縁結び
コノハナサクヤヒメが恋愛成就や縁結びにご利益があるとされる根拠は、やはりニニギノミコトとの出会いにあります。ニニギノミコトがすぐに結婚を決断してしまうほどの美しさや器量は、あやかりたい人も多いのではないでしょうか。良縁祈願をしてくれる所もあるみたいです。
安産・子授け
一晩にして子どもを授かり火中で3人の御子を出産して無事だったというこの逸話から、
コノハナサクヤヒメを安産・子授け(子宝)の神様としてお祀りしている所は少なくないようです。
酒造繁栄
コノハナサクヤヒメが酒造繁栄の神と呼ばれるのには、御子を出産した頃にあるようです。
コノハナサクヤヒメの出産後、父親のオオヤマツミノカミは大喜び。
狭名田の茂穂で天甜酒(あめのたむざけ)を造り、天地の神々にふるまいました。
この狭名田はニニギノミコトが初めて地上に作った水田とされています。
この水田より取れた米を使ってお酒を造ったのが、穀物から酒を造った始まりと言われています。
諸説ありますが、オオヤマツミノカミは酒解神(サケドケノカミ)。
娘のコノハナサクヤヒメは酒解子神(サカドケミコノカミ)と呼ばれ、酒造の祖神とされています。
火難除け
コノハナサクヤヒメが火難を払うとされているのは、やはり富士山に祀られた理由と同じではないでしょうか。
実際に富士山に祀られた後に火山活動がおさまり人々に平穏をもたらしたことから、その信憑性が高まったのでしょう。
海上・航海安全
コノハナサクヤヒメのご利益を調べると、「海上・航海安全」のご利益が出てきます。
その由来となった故事は残念ながら見つけることはできませんでした。
しかし、富士山にある浅間大社の主祭神はコノハナサクヤヒメです。
富士山を海上での位置確認のシンボルとしている航海士や、漁業関係の方から信仰の対象になっていても不思議ではないでしょう。
様々な難を乗り越えてきたコノハナサクヤヒメ、山頂から海上を見守ってくれているのかもしれません。
コノハナサクヤヒメが祀られている神社
コノハナサクヤヒメには様々な、嬉しいご利益があります。
恋愛成就や子授けなど、気になるご利益がある方は神社へ行ってみてはいかがでしょうか。
浅間神社
住所 | 〒418-0067 静岡県富士宮市宮町1-1 |
電話番号 | 0544-27-2002 |
公式サイト | http://fuji-hongu.or.jp/sengen/ |
主祭神 | 木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤヒメ)別称:浅間大神(アサマノオオカミ) |
ご利益 | 火難消除・安産・航海安全など |
浅間神社は第11代垂仁天皇が、浅間大神を現在の場所に祀ったことが起源です。
その後全国に広がり、今では1300社を超えるほどとなりました。
当麻山口神社
住所 | 〒639-0273 奈良県葛城市當麻1081 |
電話番号 | 0745-48-2214 |
公式サイト | http://www.taimayamaguchi-jinja.org/ |
主祭神 | 大山祇命(オオヤマヅミノミコト) 邇邇芸命(ニニギノミコト) 木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤヒメ) |
ご利益 | 五穀豊穣、心願成就、厄除け、開運、縁結び、子育て |
平安時代に創建されたという當麻(当麻)山口神社ですが、
こちらにはコノハナサクヤヒメとニニギノミコトが夫婦で合わせて祀られています。
コノハナサクヤヒメの父親であるオオヤマツミノカミも祀られている神社です。
子安神社
住所 | 〒192-0046 東京都八王子市明神町4-10-3 |
電話番号 | 042-642-2551 |
公式サイト | https://koyasujinja.or.jp/index.html |
主祭神 | 木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ) |
ご利益 | 安産・子育て |
子安(こやす)神社は、全国に点在しています。
全国で最古の子安神社は、東京都八王子市にある子安神社です。
こちらの子安神社は、天平宝字3年(759年)淳仁天皇の妃である
粟田諸姉(あわたのもろね)の安産祈願のため創建されました。
お住いの近くでも、探してみてください。
高千穂神社
住所 | 〒882-1101 宮崎県西臼杵郡高千穂町三田井1037 |
電話番号 | 0982-72-2413 |
観光情報サイト | https://takachiho-kanko.info/sightseeing/5/ |
主祭神 | 高千穂皇神(タカチホスメガミ) 瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)・木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ) 彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)・豊玉姫命(トヨタマヒメノミコト) 鵜鵝草葦不合尊(ウガヤフキアエズノミコト)・玉依姫命(タマヨリヒメノミコト) 十社大明神(ジュッシャダイミョウジン) 三毛入野命(ミケヌノミコト)・鵜目姫命(ウノメヒメノミコト) |
ご利益 | 縁結び・夫婦円満・子孫繁栄・所願成就 |
現在の高千穂神社が作られたのは1778年で、創建は定かではないとされています。
古くから、高千穂峡八十八社の総社として崇拝されてきました。
高千穂神社には10柱もの神様が祀られており、その中にコノハナサクヤヒメもニニギノミコトと共に含まれています。
高千穂は日本神話には欠かせない場所なので、調べてみると面白いでしょう。
伊勢神宮皇大神宮(内宮)所管社
住所 | 〒516-0023 三重県伊勢市宇治館町1 |
電話番号 | 0596-24-1111(神宮司庁) |
公式サイト | 伊勢神宮公式HP(https://www.isejingu.or.jp/about/) お伊勢さんクラブHP(https://www.iseno-sato.jp/club/isemeguri/shrine_list.php) |
主祭神 | 天照大神(アマテラスオオミカミ)など |
ご利益 | 開運招福、厄除け、農業・漁業の守護、産業振興など |
所管社は伊勢神宮の御正宮や別宮に直接かかわりがあり、
行事で用いる酒や米、塩、麻、などを調達したりすることもあるそうです。
そのことから、ここに祀られている神様の多くは衣食住に関係しています。
まとめ
コノハヤサクヤヒメについて、紹介しました。
桜の語源となった美しい神様で、ニニギノミコトとの間に3人の御子を授かった母でもあります。
素敵なご縁を求めている方は、コノハヤサクヤヒメのご利益を授かりに神社へ参拝に行くのも良いでしょう。
興味がある方はコノハナサクヤヒメとニニギノミコトの、
周りの人物について調べてみるのも面白いのでおススメです。
日本神話には、今でも実在する土地や自然が多く登場しています。
それをもとに、本物の「聖地巡礼」をしてみるのもいいかもしれませんね。