クシナダヒメといえば、「稲田の神」として五穀豊穣のご利益が有名です。
あの有名な、ヤマタノオロチ(八岐大蛇)伝承で登場する女神といわれています。
ヤマタノオロチが退治された神話やクシナダヒメという女神は知っていても、その関係性は知らないという人は多いのではないでしょうか。
この記事では、
- クシナダヒメがどんな神様なのか?
- クシナダヒメに関する諸説
- クシナダヒメのご利益について
- クシナダヒメが祀られている神社
についてご紹介していきます!ぜひ最後までご覧ください。
クシナダヒメはどんな神様?
クシナダヒメは古事記で「櫛名田比売(くしなだひめ)」、日本書紀で「奇稲田姫(くしいなだひめ)」と評される日本の女神です。
ヤマタノオロチを退治する話やスサノオの妻として有名なので、日本神話になじみのない方も耳にしたことがある名前ではないでしょうか。
クシナダヒメが登場した神話を、順にご紹介していきます。
クシナダヒメの神話
クシナダヒメは「アシナヅチ・テナヅチ」という夫婦神の娘で、出雲の国出身といわれています。
八人姉妹の一人だったクシナダヒメは家族で出雲に住んでいたのですが、ヤマタノオロチという蛇のような怪物に長年悩まされていました。
ヤマタノオロチ(八岐大蛇)の名は、聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
その字の通り八つの頭と八つの尾をもった巨大な蛇様の怪物です。
このヤマタノオロチは年に一度クシナダヒメ家族のもとにやってきて、娘を一人ずつ食べてしまいます。
末の娘であったクシナダヒメは最後の一人になり、
「いよいよ食べられてしまうのでは」と出雲の肥の川で泣き暮らす毎日でした。
しかしその後スサノオと出会ったことで、クシナダヒメの運命は大きく変わることになります。
スサノオと婚約
高天原(たかまがはら)から追放処分を受けたスサノオが偶然出雲に通りかかり、クシナダヒメをみそめました。
クシナダヒメの涙のワケを聞くと、スサノオはクシナダヒメを嫁に譲り受けることを条件にヤマタノオロチの退治を請け負います。
あのアマテラスの弟であると知ったクシナダヒメの両親は、その条件をのんでヤマタノオロチの退治を頼むこととなります。
これが、スサノオとの婚約のきっかけです。
櫛に変化しヤマタノオロチを退治
ヤマタノオロチ退治の作戦を練ったスサノオは、クシナダヒメを櫛の姿に変えて自らの髪にさします。
そして夫婦には強い酒と八つの門を作らせ、門の中にその強い酒を入れた酒桶をそれぞれ置くという罠を仕掛けました。
しばらくしてやってきたヤマタノオロチは、その八つの頭をそれぞれの門に突っ込んで酒を飲み始めます。
当然強いお酒ですから、ヤマタノオロチは酔いつぶれて寝てしまいました。
そこをスサノオが十拳剣(とつかのつるぎ)で切り落とし、ヤマタノオロチを退治したのです。
神話の中ではクシナダヒメはこの間ずっと、スサノオの髪に刺さっていたと記されています。
クシナダヒメと子孫
その後二人は約束通り夫婦となり、出雲の根之堅洲国(ねのかたすくに)に移り住みます。
そして、須賀という場所に建てた宮殿で子供を授かったのだとか。
古事記によると、この時に生まれた神が「ヤシマシヌミ」だそうです。
このヤシマシヌミの子孫が、国譲り神話で有名なオオクニヌシであると記されています。
しかし日本書紀ではこの二人の子どもこそが「オオクニヌシ」とされていて、系譜に大きな違いが見られます。
クシナダヒメの別名
クシナダヒメは別名「櫛名田比売命(クシナダヒメ)」といわれています。
これはヤマタノオロチを倒した話の時に、「櫛に変身させられた」ところから「くしになったひめ→クシナダヒメ」と当て字のようになったのではという説があります。
その他にも「奇稲田姫(クシイナダヒメ)」という表記もあり、こちらは稲田の女神といわれる由来となっていますね。
クシナダヒメと様々な説
クシナダヒメは伝説の足掛かりとして登場することが多く、様々なシーンで登場します。
またそれに伴って諸説見解が分かれる説もあるので、数例ご紹介していきましょう。
クシナダ姫の涙
クシナダヒメの涙とはヤマタノオロチに脅かされていた日々に流した涙のことですが、
この神話が吹奏楽のコンクール曲の由来となっています。
曲名は「斐伊川に流るるクシナダ姫の涙」といい、
「泣ける曲」としてコンクールでも人気の一曲になっているようです。
クシナダヒメの美しさを表す優美な旋律と、対照的なヤマタノオロチとの戦いを表す迫力ある演奏のコントラストがドラマティックな展開を生みだしています。。
神話をもとにしているので、ストーリー性のある楽曲になっているのですね。
クシナダヒメと佐久佐女の森
八重垣神社の奥の院にある「佐久佐女の森」は、ヤマタノオロチとの戦いでスサノオとクシナダヒメが身を隠したとされる「鏡の池」がある場所です。
ヤマタノオロチにおびえて暮らしていたクシナダヒメがこの佐久佐女の森の鏡の池に潜伏し、
水面を鏡代わりに身だしなみを整えていたといわれています。
現在鏡の池の正面には夫婦杉が植わっており、ご神木としてお参りに来た人々の信仰を集めています。
クシナダヒメはやまとなでしこ(倭撫子)の語源になっている?
クシナダヒメがやまとなでしこの語源といわれているのは、両親のアシナヅチとテナヅチからです。
この夫婦神の名前は「手足をなでる」という意味を持つことから、「なでるように育てられた娘」ということで「やまとなでしこ」の語源になったといわれています。
クシナダヒメのご利益
クシナダヒメはいろんな伝説とかかわりがありますが、そのご利益にはどんなものがあるのでしょうか。
いくつかご利益を紹介していきます。
縁結び
クシナダヒメはスサノオがヤマタノオロチから守ってくれた神話から、
「守ってくれる人に出会える」という縁結びのご利益を持っているとされています。
女性なら誰でも、好きな人に守ってもらえると嬉しいですよね。
佐久佐女の森にある鏡の池では縁結び占いもできるようです。
夫婦和合
クシナダヒメとスサノオが夫婦神であることから、夫婦和合のご利益もあるとされています。
佐久佐女の森にある鏡の池には夫婦杉もあり、夫婦仲を強めるにはぴったりのご利益がありそうです。
またスサノオのご利益に「守りたい人に出会う」というものもあるので、相思相愛の神様といえるでしょう。
五穀豊穣
別名「稲田姫」とされるクシナダヒメは、名前の通り五穀豊穣をつかさどっています。
実は、ヤマタノオロチの神話は農耕儀礼に基づいているという説が有力とされているのです。
ヤマタノオロチが水や山を象徴し、クシナダヒメはそれを迎える巫女という位置付けだったのではないかといわれています。
このことから、稲作の神としても祀られるようになったのですね。
金運招福
五穀豊穣はその名の通り「豊かに実る」ことを指すので、転じて金運招福のご利益もあるといわれております。
またスサノオに守ってもらい妻になった経緯から、「玉の輿」が連想されますね。
これも金運につながるのではといわれています。
厄除開運
このご利益については言うまでもなく、
ヤマタノオロチというクシナダヒメにとっての厄を除けたことからきていますね。
まさにヤマタノオロチをスサノオが退けたことから、クシナダヒメの開運は始まったといえるでしょう。
それにあやかって厄除開運のご利益を求める人が多いようですね。
衣食住守護
クシナダヒメは自身の持つ「稲田」の名と、
スサノオに護られたということから衣食住に関してもご利益があるとされています。
スサノオとクシナダヒメがその後オオクニヌシにつながって出雲を発展させることを思うと、
衣食住の守護のご利益はとても大きなものといえるでしょう。
クシナダヒメが祀られている神社
クシナダヒメは日本に広く伝わる稲作の神様なので、全国の神社で祀られているようです。
いくつか祀られている神社を紹介します。
氷川神社
住所 | 〒330-0803 埼玉県さいたま市大宮区高鼻町1-407 |
電話番号 | 048-641-0137 |
公式サイト | https://www.musashiichinomiya-hikawa.or.jp/ |
主祭神 | 須佐之男命(スサノオノミコト) 稲田姫命(イナダヒメノミコト) 大己貴命(オオナムチノミコト) |
ご利益 | 記載なし |
埼玉県にある氷川神社は、全国にある氷川神社の総本社です。
この神社では、スサノオとクシナダヒメがともに祀られています。
氷川神社の名前の由来は、出雲の大河である斐伊川とされる説も。
これは氷川神社が”出雲の国の杵築大社(出雲大社)を遷して氷川神社の神号を賜る”と風土記などに記された史実をもとにしているようです。
八重垣神社
住所 | 〒690-0035 島根県松江市佐草町227 |
電話番号 | 0852-21-1148 |
公式サイト | https://yaegakijinja.or.jp/ |
主祭神 | 素盞嗚尊(スサノオノミコト) 稲田姫命(イナダヒメノミコト) 大己貴命(大国主命) 青幡佐久佐日古命(佐草宮司先祖神) |
ご利益 | 縁結び 夫婦和合 安産 子宝 |
出雲にある八重垣神社は「出雲二十社寺」に選定されていて、特に縁結びのご利益があるといわれています。
境内には椿の木が数多く植えられ、
「夫婦椿」と呼ばれる木は二本の木が一本に絡まりあっている様子から愛の象徴とも言われているのです。
今宮神社
住所 | 〒603-8243 京都府京都市北区紫野今宮町21 |
電話番号 | 075-491-0082 |
公式サイト | http://www.imamiyajinja.org/ |
主祭神 | 事代主命(コトシロヌシノミコト) 大己貴命(オオナムチノミコト) 奇稲田姫命(クシナダヒメノミコト) |
ご利益 | 良縁開運 技芸上達 子宝 病気平癒 |
京都紫野にある今宮神社は、平安京ができるよりも前から建立されたといわれている歴史ある神社です。
今宮神社の境内には本社や疫社が多数あり、疫神を鎮めるための社となっています。
今宮神社ではスサノオが疫社に祀られていて、
暴れん坊だったスサノオを鎮めたクシナダヒメをほうふつとさせますね。
櫛田宮
住所 | 〒842-0001 佐賀県神埼市神埼町神埼419番地1 |
電話番号 | 0952-52-3016 |
公式サイト | https://www5b.biglobe.ne.jp/~kusidagu/ |
主祭神 | 櫛稲田姫命(クシナダヒメノミコト) 須佐之男命(スサノオノミコト) 日本武命 (ヤマトタケルノミコト) |
ご利益 | 縁結び 安産 病気平癒 厄払い |
櫛田宮は佐賀県にある神宮で、スサノオとクシナダヒメとヤマトタケルノミコトを祀っています。
この三人の神は「櫛田三神」と称されていて、厄払いや縁結びの神様として親しまれているようです。
毎年2月の節分には参道に巨大な手作りのお多福面を設置し、
お多福の口を潜り抜ける人に幸せを呼ぶといわれています。
まとめ
クシナダヒメは、スサノオに出会うまでヤマタノオロチに苦しめられる生活を送っていました。
しかしスサノオに救われた後は、夫婦手を取り合って繁栄に繋がる生を歩んだことから豊穣の女神とされています。
また、スサノオとクシナダヒメの夫婦神はその守り守られる仲睦まじい様子から縁結びのご利益も有名です。
二人の子孫であるオオクニヌシも同じ出雲の地の発展に協力したことから、
出雲は縁結びや豊穣の地として知られるようになります。
今ではその神話にあやかり、スサノオとクシナダヒメが全国で祀られるようになりました。
二人のパワーを受け取りたい方は、お近くの神社へお参りしてみてください。