国土形成の中心となった神様、クニノトコタチノミコトを知っていますか?
日本を作る中心となった神様ですが、あまり知られていません。
ここでは、クニノトコタチノミコトについて紹介していきます。
クニノトコタチノミコトってどんな神様?
クニノトコタチノミコトは、国を作る中心となった神様です。
日本を作った神様といえばイザナギノミコト・イザナミノミコト夫婦が有名ですが、
クニノトコタチノミコトも日本を作った神様のひとりでした。
神世七代の最初に現れた神様なのです。
神世七代については、後に詳しく解説します。
神話
クニノトコタチノミコトは、天と地とが創造されたきっかけになった神様です。
古事記と日本書紀では、記述がやや異なっています。
古事記では、
- 地上の中心に永遠の存在する神
- 性別なし
- 一度も姿を現していない
とあり、男性か女性かもわかりません。
しかし日本書紀では、
- 天地開闢の際に最初に現れた神
- 陰気さが全くない純男
と記載されています。
どちらが正しいのかは分かりませんが、国を作る際に影響があったことは間違いないでしょう。
日本書紀での記述によると「陰気さが全くない」ということなので、
今でいう爽やかな男性だったのかもしれませんね。
また、純男とは陽気のみをまとった男性という意味です。
このことから、クニノトコタチノミコトは明るい性格の男性だったとも考えられます。
こんな風に現代に置き換えて考えてみると、遠い存在である神様も身近に感じることができますね。
クニノトコタチノミコトは神世七代の一柱である
別天神のあとに現れたとされる七人の神様のことを、神世七代と言います。
この世に最初に現れた神はアメノミナカヌシで、アメノミナカヌシを含む五柱の神が別天神。
その後に生まれた根源神の初代が、クニノトコタチノミコトだと伝えられています。
簡単に言うと、別天神及び神世七代の神様によって今の日本やあらゆるものが作られたといっていいでしょう。
しかしクニノトコタチノミコトに関する記述は、あまりありません。
古事記では姿を見せずに消えてしまったそうですし、日本神話に登場するシーンはほとんどないのです。
ちなみに神世七代の最後には、日本を作ったとされるイザナギノミコトとイザナミノミコトがえがかれています。
スサノオとの繋がり
スサノオは、神世七代の最後に当たるイザナギノミコトが生んだ神です。
クニノトコタチノミコトとスサノオには一見関係がないように思えますが、一体どんな関係があるのでしょうか。
クニノトコタチノミコトとスサノオの繋がりは、「霊界物語」に記載されています。
霊界物語は、新宗教「大本」の教組である出口王仁三郎が筆記したもの。
これによると、国を作り出したクニノトコタチノミコトは八百万の神々に恐れられて地上に追放されたそうです。
クニノトコタチノミコトは、いわゆる鬼門の方角に押し込められました。
その後、贖罪神となったスサノオは悪神たちを改心させていきます。
鬼門から出されたクニノトコタチノミコトとスサノオが中心となり、日本を作っていったと記載されているのです。
スサノオといえば短気で戦いのプロというイメージですが、古事記では自分をもてなしてくれたオオゲツヒメを殺してしまいます。
ほとんど記述のないクニノトコタチノミコトですが、霊界物語ではスサノオとこんな深い関係にあったのですね。
天地開闢
天地開闢とは、天と地ができた世界の始まりという意味です。
この世界にまだ何もなかったころ、世界を作るきっかけになったのが天地開闢。
そもそも「世界」という概念さえなかったときに、まず「天と地」を作るために次々と神様が誕生していきました。
古事記では、天地開闢の最初に現れたのはアメノミナカヌシ。
その後、タカミムスビとカミムスビが「天」の世界で生まれます。
「地」の世界ではウマシアシカビヒコヂとアメノトコタチが生まれますが、すぐ姿を消してしまいました。
天地開闢は「天と地の始まり」なのですが、関わった神様たちのほとんどは姿を見せずに消えています。
様々な別名
神様には、様々な呼び名があります。
同じ神様でも、書物によって呼ばれ方が異なるのは珍しいことではありません。
- クニノソコタチノミコト
- クニノトコタチノカミ
このふたつの名前も、クニノトコタチノミコトのことを言っているのですよ。
ちなみにクニノトコタチノカミ(国之常立神)は、古事記での呼び名です。
クニノトコタチノミコトと様々な説
クニノトコタチノミコトに関する、いくつかの「説」について紹介します。
日本神話にはあまり登場しない謎多き神、クニノトコタチノミコト。
国を作る立役者でもあるのに、記述がほとんどないのは意外ですよね。
三つの説の謎を、解明していきましょう。
龍神と同一?
クニノトコタチノミコトは、天地開闢以降日本神話には登場していません。
天地開闢以降は姿も現していないのですが、龍神なのではないかという説があります。
日本の形が龍に似ていることから、日本を作ったのは龍神という説があるのです。
クニノトコタチノミコトは日本を作った神様ですから、=龍神と言われるようになったのでしょう。
また、霊界物語にも「日本を作り出した龍神として恐れられ」という記述がありますね。
龍神は神様の位の中でも最も力を持っているといわれるため、多くの神は龍神であるクニノトコタチノミコトを恐れたのかもしれません。
豊受大御神と同一神?
クニノトコタチノミコトは、伊勢神宮外宮に祀られているという説があります。
しかし、どれだけ探しても伊勢神宮外宮に祀られているという情報は見つかりません。
伊勢神宮外宮にはトヨウケノオオミカミが祀られているのですが、
実はトヨウケノオオミカミとクニノトコタチノミコトは同一という説があるのです。
クニノトコタチノミコトは国土や大地を司る神。
そしてトヨウケノオオミカミは、食物や穀物を司る神です。
食物や穀物は大地から作られるため、両者は同一として扱われているのでしょう。
実は昔は、ご利益や特徴が似ている神を同一視するという風潮がありました。
二柱の神はご利益などが似ていますので、同じ神様と言われるようになったのかもしれません。
稲荷神と同一神?
また、クニノトコタチノミコト=稲荷神という説もあります。
稲荷神は、穀物や農耕の神。
きつねを従えている神として、多くの人に親しまれていますよね。
そして稲荷神は、ウカノミタマノミコトとして信仰されてきました。
そして、ウカノミタマノミコトはトヨウケノオオミカミと同一でとする説があるのです。
トヨウケノオオミカミと稲荷神がイコールであるため、稲荷神も同一だと言われているのでしょう。
しかし、ウカノミタマノミコトはスサノオの子どもとして生まれています。
「霊界物語」によると二人は共に日本を作った神様でもあるので、その子どものウカノミタマノミコトとイコールというのは少し強引な気がしますね。
ただ、神様は私たちが考えているよりも長生きです。
そして、長く生きれば当然のように姿や呼び方が変わっていくもの。
この二柱の神も、長い年月をかけて同一として扱われるようになったのかもしれません。
クニノトコタチノミコトと吉田神道
吉田神道とは、室町時代に京都の神道家・吉田家が唱えた神道のこと。
古事記や日本書紀に基づいて、書かれているのが特徴です。
吉田神道では、クニノトコタチノミコトとアメノミナカヌシは同一だと言われています。
両者は、宇宙を作った大元尊神という位置付け。
他の神道においても、クニノトコタチノミコトは重要な神として崇められているのですよ。
ちなみに吉田神道は、伊勢神道の影響を大きく受けているといわれるもの。
伊勢神道では、アメノミナカヌシとトヨウケノオオミカミと共に根源神という位置付けになっています。
吉田神道や伊勢神道でも、クニノトコタチノミコトは「国を作った神」として崇められていたと言えるでしょう。
クニノトコタチノミコトのご利益
クニノトコタチノミコトは国を作った神様ですから、様々なご利益があると期待されています。
- 国土安穏
- 国家安泰
- 商売繫盛
- 開運招福
- 立身出世
これらのご利益について、簡単に説明していきますね。
国土安穏
国土安穏は、「国全体がおさまって安らかで穏やかなこと」という意味。
クニノトコタチノミコトは国土形成の中心となった神様ですから、
国を平和に保つ力は相当なものだと言えるでしょう。
ただし、国土安穏は日本全体という大きなくくりでの願いとなります。
そのため、個人で国土安穏をお願いしにいくことはあまりないかもしれません。
国家安泰
国家安泰は、「国が無事で安らかである」という意味です。
意味合いとしては、国土安穏とそこまでの違いはありません。
日本は戦争のない平和主義の国ですが、誰もが安心して暮らせる国かというと怪しいですよね。
日々犯罪は増えていますし、その度に傷つく人も後を絶ちません。
犯罪のない本当の平和を願って、クニノトコタチノミコトの国家安泰を願うのも良いかもしれませんね。
商売繁盛
クニノトコタチノミコトは、国土や大地を司る神です。
そして、トヨウケノオオミカミや稲荷神と同一視する見方もあります。
トヨウケノオオミカミや稲荷神は穀物の神で、昔は農業が主流でした。
農業で成功した人は必然的にお金持ちになれたことから、クニノトコタチノミコトには商売繫盛のご利益もあると言われているのです。
開運招福
開運招福は、簡単にいうなら運気を上げること。
運気をあげ、幸福が訪れるように願うことが開運招福です。
クニノトコタチノミコトは国を作った立役者ですから、あらゆるパワーを持っていても不思議ではありません。
実際、クニノトコタチノミコトが祀られている神社はパワースポットのところも多いです。
何となく不運が続いていると感じる人は、お参りに行ってみるといいかもしれませんね。
立身出世
立身出世は、世に出て認められることという意味。
そして、社会的に地位や名誉を得るという意味もあります。
クニノトコタチノミコトには立身出世を叶える効果もあるといわれていますから、出世したいと思っている人にもおすすめですよ。
クニノトコタチノミコトが祀られている神社
ではここで、クニノトコタチノミコトが祀られている神社をいくつか紹介します。
アクセスが不便なところもあるのですが、機会があれば足を運んでみてください。
大鳥神社
住所 | 〒153-0064 東京都目黒区3-1-2 |
電話番号 | 03-3494-0543 |
公式ホームページ | https://www.ootorijinja.or.jp/ |
主祭神 | ヤマトタケルノミコト、クニノトコタチノミコト、オトタチバナヒメノミコト |
ご利益 | 良縁、厄除け、商売繫盛、目の病の治癒 |
大鳥神社は、東京都目黒区にある目黒区最古の神社です。
ヤマトタケルの霊が白鳥として現れたところに、社殿ができたという言い伝えがあります。
毎年9月には例大祭が盛大に行われているので、足を運んでみてはいかがでしょうか。
日枝神社
住所 | 〒100-0014 東京都千代田区永田町2-10-5 |
電話番号 | 03-3581-2471 |
公式ホームページ | https://www.hiejinja.net/ |
主祭神 | オオヤマクイノカミ、クニノトコタチノカミ、 イザナミノカミ、タラシナカツヒコノミコト |
ご利益 | 厄除け、安産、縁結び、商売繫盛、社運隆昌 |
日枝神社は、東京都永田町にあります。
アクセスが良いこともあり、お正月などには多くの参拝者が訪れる人気のスポット。
新年のお祝いとして、皇室の繫栄と国の益々の発展を祈る祭「四方拝」が行われます。
その他にも、日枝神社では毎月何らかの神事が行われていますので訪れる価値は十分にあるといえるでしょう。
城南宮
住所 | 〒612-8459 京都市伏見区中島鳥羽離宮町7 |
電話番号 | 075-623-0846 |
公式ホームページ | https://www.jonangu.com/ |
主祭神 | クニノトコタチノミコト |
ご利益 | 家庭円満、厄除け、安全祈願 |
城南宮は京都にある神社で、四季折々の自然が楽しめるスポットでもあります。
桜や紅葉だけでなく、2月には「しだれ梅と椿まつり」も開催。
広大な敷地の中で眺める梅や椿の花は、ここでしか味わえない風情を感じることができるでしょう。
城南宮の庭園「楽水苑」は、源氏物語花の庭と言われています。
玉置神社
住所 | 〒647-1582 奈良県吉野郡十津川村玉置川1 |
電話番号 | 0746-64-0500 |
公式ホームページ | https://tamakijinja.or.jp/ |
主祭神 | クニノトコタチノミコト、イザナギノミコト、 イザナミノミコト、アマテラスオオミカミ、カムヤマトイワレヒコノミコト |
ご利益 | 縁結び、悪霊退散、開運厄除け、病気平癒、家内安全、立身出世、安産 |
玉置神社は、標高1000mの山奥にひっそりと立つ神社です。
アクセスに関しては、お世辞にも良いとは言えません。
玉置神社の社務所は、国の重要文化財に登録されています。
玉置神社の例祭は10月に行われており、お神輿が山道を下るところを拝むことができるでしょう。
御岩神社
住所 | 〒311-0402 茨城県日立市入四間町752 |
電話番号 | 0294-21-8445 |
公式ホームページ | https://www.oiwajinja.jp/index.html |
主祭神 | クニノトコタチノミコト、オオクニヌシノミコト、 イザナギノミコト、イザナミノミコト |
ご利益 | 金運上昇、恋愛成就、健康、商売繫盛 |
御岩神社は、茨城県の山奥にあります。
雨の日などは、周辺の道が通行止めになるなどアクセスが良いとは言えません。
御岩山回向祭は、御岩神社特有のお祭りとして多くの人に親しまれているもの。
祈りを捧げることにより、神様仏様に守護してもらえるようになるでしょう。
まとめ
国土形成の中心となった神・クニノトコタチノミコトについて紹介しました。
日本神話にはあまり登場しない謎多き神ですが、国を作った神様です。
龍神やトヨウケノオオミカミなどと同一視され、多くのご利益があることは言うまでもありません。
なにか悩みがある人や不安がある方は、ぜひクニノトコタチノミコトをお参りしてみてくださいね。