食物神、穀物神などといわれているトヨウケノオオカミを知っていますか?
古くから日本では、農業が生活の要でした。
そのため、トヨウケノオオカミは日本で広く信仰されてきた神だと言えるでしょう。
ここでは、
- トヨウケノオオカミについて
- トヨウケノオオカミにまつえある様々な説
- トヨウケノオオカミのご利益と祀られている神社
について紹介していきます。
ぜひ最後まで読み進めてみてください。
トヨウケノオオカミとはどんな神様?
トヨウケノオオカミは、一言で言うなら「食物の神」です。
その他にも、穀物の神や農耕の神としての神格も持っています。
「食」は私たちの生活において欠かせないため、古くから崇められてきたのでしょう。
そんなトヨウケノオオカミがどんな神様だったのか、詳しく紹介していきます。
羽衣伝説
古書「丹後風土記」において、羽衣伝説のモデルとなったのがトヨウケノオオカミだと言われています。
丹波国の泉で、八人の天女が水浴びをしていました。
そのとき置いてあった羽衣を一枚、老夫婦が隠してしまいます。
羽衣を失い、天に帰れなくなったのがトヨウケノオオカミなのです。
トヨウケノオオカミは老夫婦が自分の羽衣を隠したことを知らず、老夫婦の養女として地上での生活を始めます。
トヨウケノオオカミは米作りや酒造りが上手く、老夫婦はたちまちお金持ちになったそうです。
天女の羽衣の話は有名ですが、このとき羽衣を隠されたのがトヨウケノオオカミだというのはあまり知られていません。
お金持ちになった老夫婦は天女(トヨウケノオオカミ)を捨て、トヨウケノオオカミは遠い奈具村で生涯を終えるというお話です。
名前の由来
トヨウケノオオカミは、その名前からも食物神であることが伺えます。
トヨウケノオオカミの「トヨ」は豊かさを、「ウケ」は食物を表しているのです。
食物が豊かであることから穀物神、食事に困らないことから御饌の神とも呼ばれています。
トヨウケノオオカミの系譜
トヨウケノオオカミは丹後風土記では天女として登場しますが、古事記では少し違います。
古事記ではトヨウケノオオカミは、ワクムスビの娘として登場しているのです。
ワクムスビはイザナミノカミの尿から生まれた神ですので、ワクムスビはイザナミノカミとイザナギノオオカミの子供ということになるでしょう。
つまりトヨウケノオオカミは、国生みの神・イザナミノカミの孫に当たるというわけです。
トヨウケノオオカミの別名
トヨウケノオオカミには、多くの別名があります。
- トヨウケビネノカミ
- トヨウカノメ
- トヨウケノヒメ
- トヨウケノオオミカミ
どの呼び名にも「トヨ」と「ウケ(ウカ)」が入っていますよね。
ウケもウカも食べ物のことを表していますので、トヨウケノオオカミが食物の神であったことがわかります。
トヨウケノオオカミの様々な説
トヨウケノオオカミには、いくつかの説があります。
食物の神として古くから君臨していたわけですから、様々な説があっても不思議ではありません。
ここでは、そのうちのいくつかを紹介しましょう。
アマテラスオオミカミとの関係
アマテラスオオミカミは、禊の際にイザナギノオオカミから生まれました。
このときすでに妻であるイザナミノカミは亡くなっていますが、アマテラスオオミカミは「イザナミノカミの子」という見方もできるでしょう。
そうなるとトヨウケノオオカミの父であるワクムスビと、アマテラスオオミカミは兄妹ということになります。
つまりトヨウケノオオカミとアマテラスオオミカミは、「姪と叔母」の関係だということです。
また、トヨウケノオオカミはアマテラスオオミカミの食べ物を調達する係だったという説もあります。
アマテラスオオミカミに指名され、はるばる伊勢までやってきたと言われているのです。
伊勢神宮との関係
アマテラスオオミカミがトヨウケノオオカミを自分のところに遣わせるようにと告げた後、当時の天皇であった雄略天皇は伊勢の山田原に神殿を建てます。そしてその神殿に、トヨウケノオオカミを迎え入れたそうです。
これが伊勢神宮外宮・豊受大神宮の始まりとなりました。
伊勢神宮外宮にトヨウケノオオカミが祀られるようになったきっかけは、トヨウケノオオカミがアマテラスオオミカミに呼ばれたことだと言えるでしょう。
稲荷神と同一神?
トヨウケノオオカミと稲荷神(ウカノミタマノカミ)は、ともに女性です。
そして両者とも穀物神であるため、同一視されることも少なくありません。
ご利益や性格などが似ている神を同一人物として扱うことは、昔は割と当たり前だったのです。
トヨウケノオオカミと稲荷神は性格や性別、神格などが同じであるため同一神として扱われることが多いのでしょう。
トヨウケノオオカミのご利益
トヨウケノオオカミには、多くのご利益があります。
その多くは私たちの生活においても身近なものなので、ぜひお参りしてみてはいかがでしょうか。
トヨウケノオオカミのご利益として有名なものを、いくつか紹介します。
開運招福
開運招福とは、運気を上げて福を招くという意味です。
トヨウケノオオカミを養女にした老夫婦の生活が一変したことから、トヨウケノオオカミには福を招く力があると言われるようになりました。
最近ついていないと感じる人は、お参りに行ってみることをおすすめします。
五穀豊穣
トヨウケノオオカミは食物の神であり、穀物の神でもあります。
昔は農業が生活の基盤であり、豊かさの象徴でもありました。
トヨウケノオオカミは食物の神としての神格がありますから、五穀豊穣のご利益で右に出る者はいないでしょう。
厄除け
厄除けとは、厄災や邪気がやってこないようにすることを言います。
昔は、自然災害などもすべて厄災やケガレが原因だと信じられてきました。
自然災害が起これば稲は実らず、農業は成立しません。
トヨウケノオオカミは穀物神ですので、厄災などに打ち勝つ力があると信じられてきたのでしょう。
農業・漁業守護
トヨウケノオオカミは農業のイメージが強いのですが、それだけではありません。
生み出した産物を豊かに収穫し、恵みを人々にもたらす守護神でもあります。
そのため、農業だけでなく漁業主語のご利益も期待できるのです。
産業振興
産業というのは、昔から衣食住の基本とも言えます。
私たちの豊かな生活は、産業によって支えられていると言っても過言ではありません。
トヨウケノオオカミは豊かさの象徴でもありますから、産業振興のために訪れる人も後を絶たないのです。
トヨウケノオオカミが祀られている神社
ではここで、トヨウケノオオカミが祀られている神社をいくつか紹介しましょう。
トヨウケノオオカミは豊作の神として古くから崇められてきたことから、多くの神社に祀られています。
近くを訪れた際は、ぜひ足を運んでみてください。
伊勢神宮外宮・豊受大神宮
住所 | 三重県伊勢市豊川町279 |
電話番号 | 0596-24-1111 |
公式サイト | https://www.isejingu.or.jp/ |
主祭神 | トヨウケノオオカミ |
ご利益 | 開運招福、厄除け、産業振興 |
伊勢神宮には内宮と外宮がありますが、トヨウケノオオカミが祀られているのは「外宮」になります。
豊受大神宮では毎日「日別朝夕大御饌祭」という、神様に食事を祀るお祭りを行っています。
トヨウケノオオカミは衣食住や農産業の神様ですから、祈りと感謝をささげているのでしょう。
発寒神社
住所 | 〒063-0831 北海道札幌市西区発寒11条3丁目1-33 |
電話番号 | 011-661-3973 |
公式サイト | http://hassamujinja.com/index.html |
主祭神 | トヨウケノオオカミ、ウガノミタマノオオカミ |
ご利益 | 厄除け、家内安全、商売繫盛 |
発寒神社は、札幌市にある神社です。
例大祭では多くの出店が並び、お神輿が町を練り歩くところを見ることができます。
地元の人が中心となって行われるお祭りで、1年で最も盛り上がると言っても過言ではありません。
他にも発寒神社では、多くのお祭りが行われています。
トヨウケノオオカミとウガノミタマノオオカミを一緒に祀っている神社なので、家内安全や商売繫盛のご利益を大いに期待できるでしょう。
東京大神宮
住所 | 〒102-0071 東京都千代田区富士見2-4-1 |
電話番号 | 03-3262-3566 |
公式サイト | https://www.tokyodaijingu.or.jp/ |
主祭神 | アマテラスオオミカミ、トヨウケノオオカミ |
ご利益 | 家内安全、商売繫盛、厄除開運、良縁、交通安全、学業成就 |
東京大神宮は、東京のお伊勢さまと呼ばれています。
主に縁結びのイメージが強いですが、商売繫盛や厄除けなど幅広いご利益があることが特徴です。
4月に行われている例祭は東京大神宮最大のお祭りで、
この時期にいくと地元の子供たちによるお神輿などを見ることができるでしょう。
その他にも、七夕祭りなど季節に応じた多くのお祭りが開催されています。
籠神社
住所 | 〒629-2242 京都府宮津市字大垣430 |
電話番号 | 0772-27-0006 |
公式サイト | https://www.motoise.jp/ |
主祭神 | ヒコホアカリノミコト |
ご利益 | 開運招福、事業繫栄 |
籠神社は、伊勢のふるさとともいわれる「元伊勢神社」です。
籠神社では、他の神社にはない「むすひ詣り」を行っていることでも知られています。
むすひ詣りとは満月の日と新月の日にお参りすることで、この日しか手に入らないお守りが有名です。
産霊守には、満月バージョンと新月バージョンがあるのでそろえてみてはいかがでしょうか。
榊山稲荷神社
住所 | 〒020-0061 岩手県盛岡市北山二丁目12-12 |
電話番号 | 019-661-6211 |
公式サイト | http://kaiunjinja.jp/index.html |
主祭神 | トヨウケノオオカミ |
ご利益 | 開運招福、厄除け、家内安全 |
榊山稲荷神社には、「かいうん六社九日参り」という信仰が古くからあります。
この信仰は今でも受け継がれていて、毎月9日・19日・29日には多くの人が参拝に訪れているのです。
また、4月には3日間に渡って例大祭を開催しています。
こちらも多くの人が参拝に訪れる、人気の高いお祭りだといえるでしょう。
まとめ
食物の神、トヨウケノオオカミについて紹介しました。
トヨウケノオオカミはイザナミノカミの孫であり、アマテラスオオミカミの姪にあたる神様です。
アマテラスオオミカミの食事の調達をしていたことから、衣食住を司る神様とも言われています。
私たちにとって身近な神様ですので、ぜひ祀られている神社を参拝してみてください。