神話の中で悲劇のヒロインでもある、オトタチバナヒメを知っていますか?
オトタチバナヒメは、愛する夫のために海に身を投げた女神です。
ここでは、そんなオトタチバナヒメについて詳しく紹介していきましょう。
多くの人の心を動かしてきたオトタチバナヒメについて知り、より身近に感じてみてください。
オトタチバナヒメってどんな神様?
オトタチバナヒメとは、一体どんな神様なのでしょうか。
日本神話にはたくさんの神様が登場しますが、オトタチバナヒメもそのひとり。
大和政権の英雄、ヤマトタケルノミコトの妻になる神様です。
オトタチバナヒメの神話
オトタチバナヒメは、神話には「ヤマトタケルノミコトの妻」として登場します。
ヤマトタケルノミコトは、父親の命で全国各地を回り敵を征伐してきました。
東国を征伐しに行っているとき、荒れ狂う海に行く手を阻まれてしまいます。
このままでは全員が海に流されてしまうと思い、オトタチバナヒメは自ら海に身を投げたのです。
自分が海に身を投げることで海を鎮め、夫の東国征伐を成功に導きました。
愛する人のために自分を犠牲にするという、悲劇の女神だったのです。
名前の由来
オトタチバナヒメという名前は、強い生命力を表していると言われています。
タチバナというのは、霊樹として扱われてきました。
冬でも枯れることのない強い生命力を持っていることが特徴です。
自分の命と引き換えに多くの人を救い、荒れ狂う海を鎮めたオトタチバナヒメにぴったりの名前ですね。
オトタチバナヒメの神格
オトタチバナヒメは夫を愛し、その夫を守るために海に身を投げました。
自分の命と引き換えに海を鎮めたオトタチバナヒメには、「海神の巫女」としての神格があります。
海を司り、海をなだめる役割を担っていたと言えるでしょう。
また、命をかけてまで夫を愛したことから、恋愛の神様というイメージも強いです。
実際にオトタチバナヒメを祀っている神社は、恋愛のパワースポットとして人気があります。
オトタチバナヒメの別名
古事記でも日本書紀でも、読みは「オトタチバナヒメ」です。
漢字は違いますが、どちらの書物でも「オトタチバナヒメ」と呼ばれています。
その他の呼び方としては、
- タチバナヒメノミコト
- 吾妻大明神
などがあるでしょう。
オトタチバナヒメが海に身を投げたとき、ヤマトタケルノミコトが「あずまはや(我が妻よ)」と嘆きました。
このことからこの場所が吾妻と呼ばれ、オトタチバナヒメが祀られるようになったのです。
オトタチバナヒメとヤマトタケルノミコト
オトタチバナヒメといえば、やはりヤマトタケルノミコトとの関係は外せません。
オトタチバナヒメはヤマトタケルノミコトと出会ったことで、その人生が変わりました。
ふたりの関係について、詳しく見ていきましょう。
ヤマトタケルノミコトの妻
オトタチバナヒメはヤマトタケルノミコトの妻です。
ふたりが出会ったのは幼少の頃で、伊勢の斎王・倭姫のもとで出会いました。
月日が経つにつれてふたりはお互いを愛するようになり、そして結婚するのです。
昔の結婚は、親が決めた相手とするなどいわゆる政略結婚が主流でした。
そんな中お互いを愛して結婚したのですから、ふたりの絆は固く結ばれていたのでしょう。
海に身を投じる
夫であるヤマトタケルノミコトは、父親の命令で全国各地を回っていました。
景行天皇に恐れられ、討伐から帰った途端に次の任務に行かされる過酷な日々を送っていたのです。
東国を征伐するために船で海を渡っているとき、事件は起きました。
急に海が荒れ始め、船が壊れてしまったのです。
このままでは全員死んでしまうと察したオトタチバナヒメは、
自らが海に入ることで荒れ狂う海を鎮めようとしました。
結果オトタチバナヒメは命を落としますが、海は穏やかな状態に戻ったそうです。
海に身を投げる直前、オトタチバナヒメは愛する夫に向けた歌を詠みました。
その歌に応えるかのように、ヤマトタケルノミコトは「あずまはや」と妻が亡くなったことを嘆いたのです。
オトタチバナヒメの子
オトタチバナヒメとヤマトタケルノミコトの間には、子どもがいます。
古事記では「ワカタケル」、日本書紀では「ワカタケヒコ」と記載されていますがおそらく同一人物でしょう。
オトタチバナヒメに関する記述は少なく、他にも子供がいたのかどうかは不明です。
オトタチバナヒメとヤマトタケルノミコトの間には「9人の男の子がいた」という説もありますが、
真相は分かっていません。
どちらにせよ、ふたりが仲睦まじい夫婦であったことは間違いないと言えるでしょう。
オトタチバナヒメのご利益
オトタチバナヒメは、夫であるヤマトタケルノミコトを献身的に支えました。
最終的には夫のために命を落とすのですが、その選択に悔いはなかったのでしょう。
オトタチバナヒメのご利益からも、その思いが伝わってきますね。
縁結び
オトタチバナヒメの代表的なご利益ともいえるのが、縁結びです。
幼少の頃に知り合ったオトタチバナヒメとヤマトタケルノミコトは、お互いの思いを通じ合わせて結婚します。
今でいう恋愛結婚をした、と言えるでしょう。
そのため、縁結びのご利益は非常に高い効果を誇っているのです。
海上安全
オトタチバナヒメは、荒れ狂う海にその身を投げて海を鎮めました。
荒れ狂う海は、そのままでは多くの命を奪ってしまいます。
オトタチバナヒメはそんな海を鎮めたわけですから、海上安全のご利益もあるといえるでしょう。
海に遊びに行く前などに、お参りしておくと良いかもしれません。
出世開運
オトタチバナヒメの夫であるヤマトタケルノミコトは、景行天皇の子どもです。
ふたりの間には子どもがいますので、その子は天皇の孫ということになります。
当時は天皇に勝るものはいませんでしたから、天皇の血筋を引いたオトタチバナヒメを信仰すると出世できるといわれるのかもしれませんね。
献身
オトタチバナヒメは、わが身を捨てて夫を助けました。
夫が使命を果たすために、命を捨てて海を鎮めたのです。
自分が身代わりになってまで献身的に夫に尽くした神様は、他にはいません。
商売繁盛
オトタチバナヒメが海に身を投げたのは、夫が東国を征伐するのを成功させるためです。
海を鎮めたことで無事に東国を征伐し、その結果大和政権は栄えていきました。
オトタチバナヒメがいなければ、政権が栄えることはなかったでしょう。
このことから、オトタチバナヒメには商売繫盛のご利益もあるのです。
オトタチバナヒメが祀られている神社
ではここで、オトタチバナヒメが祀られている神社をいくつか紹介します。
オトタチバナヒメはヤマトタケルノミコトの妻であり、ふたりは相思相愛でした。
そのため、オトタチバナヒメはヤマトタケルノミコトと一緒に祀られていることが多いです。
走水神社
住所 | 〒239-0811 神奈川県横須賀市走水2-12-5 |
電話番号 | 046-844-4122 |
公式サイト | http://www12.plala.or.jp/hasirimizujinjya/index.html |
主祭神 | ヤマトタケルノミコト、オトタチバナヒメ |
ご利益 | 夫婦円満、良縁成就、海上安全 |
走水神社は、オトタチバナヒメがヤマトタケルノミコトを助けるために海に身を投げた場所です。
神話のもとになった場所というだけあり、全国各地から参拝者が絶えません。
例大祭は10月に行われており、町内役員が列をなして神事に参加しています。
地元の人以外も観覧できるので、ぜひ参拝に行ってみてはいかがでしょうか。
吾妻神社
住所 | 〒377-0415 群馬県吾妻郡中之条町大字横尾1354 |
電話番号 | 0297-75-1498 |
公式サイト | https://www.warinomiya.org/ |
主祭神 | オオナムチノカミ |
ご利益 | 縁結び、家内安全、病気平癒 |
群馬県にある吾妻神社は、地元の人に愛されている地域密着型の神社です。
例大祭は毎年4月1日に行われており、多くの人で賑わっていますよ。
当日は神楽奉納や獅子舞奉納のほか、子どもが楽しめるイベントもたくさんあります。
神社をより身近に感じるためにも、お参りに行ってみると良いでしょう。
橘樹神社
住所 | 〒213-0023 神奈川県川崎市高津区子母口122 |
電話番号 | 044-766-8868 |
公式サイト | https://tachibana-jinja.jp/index.html |
主祭神 | ヤマトタケルノミコト、オトタチバナヒメ |
ご利益 | 縁結び、家内安全、海上安全 |
橘樹神社は、静かな住宅街にあります。
決して大きな神社ではありませんが、静かに佇む様子は歴史を感じる貫禄があると言えるでしょう。
海に身を投げたオトタチバナヒメが身に着けていた衣服などが流れ着き、神社として祀ることにしたそうです。
10月の例大祭ではお囃子が町内をまわり、秋の風物詩となっています。
亀戸浅間神社
住所 | 〒136-0071 東京都江東区亀戸9丁目15-7 |
電話番号 | 03-3682-1581 |
公式サイト | https://www.sengen.or.jp/ |
主祭神 | コノハナサクヤヒメ |
ご利益 | 安産、家内安全、心願成就、病気平癒 |
亀戸浅間神社は、オトタチバナヒメの櫛などが流れ着いた場所だと言われています。
海に身を投げたオトタチバナヒメの服や持ち物などは、色々な場所に漂着しました。
亀戸浅間神社もそのひとつなのです。
4年に一度行われている本祭神輿渡御は、大きなお神輿が街中を練り歩き大変な賑わいを見せています。
まとめ
愛する夫のために海に身を投げた妻、オトタチバナヒメについて紹介しました。
オトタチバナヒメはヤマトタケルノミコトの妻であり、夫を助けるためにわが身を犠牲にした海の神様です。
荒れ狂う海を鎮める力を持っており、並外れた生命力を持っていることでも知られています。
特に夫婦円満や縁結びなど恋愛のご利益が有名ですので、ぜひお参りに足を運んでみてください。